
「遮光ネットは、遮光率何%を選べばよいのか?」
遮光ネットを探している方から、よく聞かれる質問です。
商品を見ると、遮光率20%、40%、50%、70%など、さまざまな数値が表示されています。そのため、遮光率だけを見て選びたくなりますが、遮光ネットは遮光率だけでは選べません。
同じ作物でも、ハウス内の暑さを抑えたい場合、葉や果実の日焼けを防ぎたい場合、育苗中の苗を守りたい場合など、使用目的によって適した遮光率や設置方法が変わります。
また、遮光率が高いほど、必ずハウス内が涼しくなるわけでもありません。ネットの色、遮熱性、通気性、外張りか内張りかによっても効果が異なります。
この記事では、遮光ネットを選ぶときに確認したいポイントを、使用目的、遮光率、色、設置方法の順に解説します。
遮光ネットは何を基準に選ぶ?
遮光ネットは、次の順番で選ぶと整理しやすくなります。
- 何を改善するために使うのか
- どこに設置するのか
- 何を栽培し、どの生育段階で使うのか
- いつからいつまで使用するのか
- 遮光率・色・遮熱性を選ぶ
- サイズと固定方法を確認する
最初から「トマトだから遮光率40%」「夏だから遮光率70%」と決めるのではなく、まずは何を改善したいのかを確認することが重要です。
同じトマトでも、育苗中の苗を守る場合、果実の日焼けを防ぐ場合、ハウス全体の昇温を抑える場合では、使用方法が異なります。
遮光ネットを使用目的から選ぶ
ハウス内の温度上昇を抑えたい
夏場のハウス内に入る強い日射をやわらげ、温度上昇を抑えたい場合です。
この用途では、遮光率だけでなく、光や熱を反射しやすい白色・シルバー系の遮熱タイプも候補になります。
ハウスの外側に遮光ネットを設置する外張りは、太陽光がハウス内に入る前に遮りやすいため、昇温抑制を重視する場合に向いています。
一方で、遮光率を高くしすぎると、作物の光合成に必要な光まで減らしてしまいます。光をなるべく残したい作物では、低い遮光率から検討しましょう。
葉焼け・果実の日焼けを防ぎたい
葉や果実に強い直射日光が当たり、葉焼けや日焼け果が発生する場合に使用します。
この場合は、ハウス全体を常に暗くするだけでなく、次のような方法も検討します。
- 日射が強い時間帯だけ遮光する
- 西日が当たる側だけ遮光する
- 作物の上部だけ部分的に遮光する
- 晴天時だけ遮光ネットを展張する
遮光しすぎると、作物の生育、着果、果実の肥大、収量などに影響する可能性があります。必要な場所や時間に限定して使用する方法も有効です。
育苗中の苗を守りたい
育苗中の苗は、強い直射日光や急激な温度上昇によって、萎れや葉焼けが発生することがあります。
育苗用途では、中程度の遮光率を候補にしながら、苗の状態や天候を見て調整します。
晴天時には適切でも、曇天時まで張りっぱなしにすると光量不足になる可能性があります。取り外しやすい設置方法や、開閉できる方法も検討しましょう。
夏の定植直後を守りたい
夏季の定植直後は、まだ十分に根が張っておらず、高温や強い日差しの影響を受けやすい時期です。
農研機構が公開しているキャベツの栽培事例では、7月下旬から8月下旬の定植時に、遮光率40~45%のシルバー不織布を、定植直後から浮きがけする方法が示されています。
これは栽培期間を通して使用するのではなく、定植直後の高温ストレスを軽減するための使用例です。活着後も遮光を続けると光量不足になる場合があるため、作物の状態を見ながら撤去を検討します。
参考:農研機構「不織布を利用したキャベツの無農薬・減農薬栽培技術」
葉物野菜や強い日差しに弱い植物を守りたい
ホウレンソウなど、高温や強い日差しの影響を受けやすい作物では、比較的高い遮光率の資材が使用されることがあります。
農研機構が公開している高温期ホウレンソウの事例では、近畿地域で遮光率45~60%の白色資材が使用されています。
ただし、栽培期間中ずっと遮光を続けると、葉色が薄くなる、徒長気味になる、成分品質が低下するといった問題が生じる場合があります。この事例では、草丈20cm程度で遮光資材を取り除く方法が示されています。
葉物野菜でも、遮光率の高いネットを張りっぱなしにすればよいわけではありません。
参考:農研機構「高温期ホウレンソウの収穫前遮光除去・晴天日遭遇後収穫による品質向上」
作業場所や資材置場に日陰を作りたい
農作業を行う場所や資材置場に日陰を作りたい場合は、作物の光合成を考慮する必要がないため、栽培用途よりも高遮光率の製品を選びやすくなります。
ただし、使用場所や求める明るさによって必要な遮光率は異なります。一律に「作業場所なら何%」と決めるのではなく、製品ごとの遮光率を確認してください。
屋外で設置する場合は、遮光率だけでなく、次の項目も確認しましょう。
- 耐候性
- 通気性
- 風に対する強度
- ハトメの有無
- ロープや固定具の種類
- 強風時に撤去できるか

遮光率とは?
遮光率とは、遮光ネットがどの程度の光を遮るかを示す数値です。
例えば、遮光率50%は、ネットがない状態と比べて、光を約50%遮ることを示す目安です。
ただし、遮光率50%だからといって、次の意味になるわけではありません。
- 気温が50%下がる
- 熱を50%遮る
- 紫外線を50%遮る
- 作物が受ける高温ストレスを50%減らす
遮光率は、あくまで光を遮る割合を表す指標です。暑さ対策では、遮光率だけでなく、色、遮熱性、通気性、設置方法なども確認する必要があります。
遮光率の選び方の目安
アグリズでは、商品を比較しやすくするため、遮光率を次の4段階に整理しています。
この区分は、法律や公的規格で定められた分類ではなく、商品を比較しやすくするための当店独自の目安です。
| 遮光の強さ | 遮光率の目安 | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|---|
| 弱め | 20~30%前後 | 明るさを残しながら日差しをやわらげる | 軽い暑さ対策、葉焼け・果実の日焼け対策、光をなるべく残したい場合 |
| 中程度 | 30~50%前後 | 育苗や定植直後など、比較的幅広い用途に使用しやすい | 育苗、定植直後、高温対策、葉焼け対策 |
| 強め | 50~70%前後 | 強い日差しをしっかり抑えたい場合に使用する | 葉物野菜、強い日差しに弱い植物、強めの日よけ |
| 非常に強い | 70%以上 | かなり強い日よけや、特殊な高遮光用途に使用する | 作業場所、資材置場、特殊な栽培用途 |
遮光率はあくまで目安です
適切な遮光率は、作物・品種・生育段階・地域・時期・設置方法・使用時間・製品特性によって異なります。

遮光ネットの色による違い
遮光ネットには、黒、白、シルバーなどがあります。
色が違うと、単に見た目が変わるだけでなく、光の吸収、反射、散乱の仕方も変わります。
黒色の遮光ネット
黒色は、光を吸収して遮る一般的なタイプです。
製品数が多く、さまざまな遮光率から選びやすい一方で、ネット自体が日射を吸収して熱を持つ場合があります。
単純な日よけや、価格、サイズ、耐久性を重視する場合に選ばれることが多い色です。
白色の遮光ネット
白色は、光を反射・散乱させやすい特徴があります。
ハウス内を暗くしすぎず、光を広げながら取り込むことを目的とした製品もあります。
光をなるべく残しながら、強い日差しや高温を抑えたい場合に候補になります。
シルバー・アルミ系の遮光ネット
シルバーやアルミを使用した資材は、日射や熱線を反射する機能を重視した製品が多くあります。
ハウス内の暑さを抑えることが目的の場合は、遮光率だけでなく、遮熱性能や赤外線に対する性能も確認してください。
高温期のミニトマトを対象とした研究では、白色、銀色、黒色の遮光資材で、散乱光やハウス内の環境、収量に違いが確認されています。
白色資材は散乱光率が高く、銀色、黒色がそれに続く結果となりました。また、同じ白色資材でも、遮光率と散乱光率の関係が製品ごとに異なることが示されています。
ただし、これは特定の資材、施設、作物、栽培条件による試験結果です。すべての白色・銀色・黒色ネットに同じ結果が当てはまるわけではありません。
参考:植物環境工学「遮光資材の違いが高温期のミニトマト栽培における温室内環境および収量に及ぼす影響」
ハウスの外張りと内張りはどちらを選ぶ?
ハウスに遮光ネットを設置する場合は、ハウスフィルムの外側に設置する「外張り」と、ハウス内に設置する「内張り」があります。
| 外張り | 内張り | |
|---|---|---|
| 設置場所 | ハウスフィルムの外側 | ハウスの内側 |
| 昇温抑制 | 日射がハウス内へ入る前に遮りやすい | 日射がハウス内へ入った後に遮る |
| 開閉 | 設置方法によっては開閉が難しい | 手動・自動で開閉しやすい |
| 風雨の影響 | 受けやすい | 受けにくい |
| 主なメリット | 昇温抑制効果を得やすい | 天候に応じて調整しやすい |
滋賀県が公開している施設果菜類の実証では、遮光率35%の外張り資材と、遮光率50%の内張り資材が比較されています。
この実証では、外張り35%の区で、内張り50%の区と比較して、昼間に4℃以上の昇温抑制効果が確認されました。
ただし、遮光率だけでなく、使用した資材の遮熱性能や設置位置も異なります。「外張り35%なら、どの商品でも内張り50%より涼しい」という意味ではありません。
また、外張りは天候に応じて開閉しにくく、曇天や雨天が続いた場合には、光量不足による生育への影響が懸念されます。
内張りは天候に応じて開閉しやすい反面、ネット自体がハウス内で熱を持つことで、昇温抑制効果が低くなる場合があります。
参考:滋賀県農業技術振興センター「施設果菜類における高温対策の手引き」
同じ遮光率でもメーカーや商品によって違う?
同じ「遮光率50%」と表示されている商品でも、実際の使用環境でまったく同じ状態になるとは限りません。
違いが生じる主な要因には、次のようなものがあります。
- 素材
- 色
- 糸の太さ
- 網目や隙間の構造
- 編み方や製造方法
- 光を吸収するか、反射するか、散乱させるか
- ネットの張り具合
- 直射光と散乱光の割合
- 測定環境と実際の屋外環境の違い
遮光資材の研究では、メーカーの規格表に記載されている遮光率と、屋外で実測された遮光率に差が出た製品も確認されています。
そのため、異なるメーカーの商品を比較するときは、遮光率の数字だけでなく、色、素材、編み方、通気性、遮熱機能なども確認する必要があります。
遮光ネット選びでよくある失敗
遮光率が高いほど涼しいと思って選ぶ
遮光率が高くても、ネットが熱を持ったり、通気性が低かったりすると、期待したほど温度が下がらない場合があります。
暑さ対策では、遮光率に加えて、色、遮熱性、通気性、外張り・内張りなども確認しましょう。
作物名だけで遮光率を決める
同じ作物でも、育苗、定植直後、収穫期、果実の日焼け対策では、適した使用方法が異なります。
「何を育てるか」だけでなく、いつ、何を改善するために使うのかを確認してください。
一度設置したら張りっぱなしにする
晴天時には適切な遮光率でも、曇天時には光量不足になる場合があります。
特に育苗や果菜類では、開閉式にする、晴天時だけ使用する、活着後に外すなどの調整が必要です。
高温期のトマト栽培では、遮光率45%の内張り資材を日射量に応じて自動開閉することで、常時遮光より遮光時間を短くしながら、ハウス内気温や葉温を下げた事例があります。
参考:農研機構「高温期のトマト低段密植栽培における積算日射量に基づく遮光資材の自動開閉」
サイズと固定方法を確認していない
遮光率が合っていても、ハウスの寸法に合わなかったり、風で大きくばたついたりすると、適切に使用できません。
購入前には、次の項目を確認しましょう。
- 必要な幅と長さ
- ハウス全体に張るのか、屋根部分だけに張るのか
- ハトメが必要か
- ロープや固定具をどのように取り付けるか
- 強風や台風の前に取り外せるか
- 開閉して使用するか、一定期間張り続けるか
遮光ネットを購入する前のチェック項目
商品を選ぶ前に、次の内容を確認しておくと、必要な遮光ネットを絞り込みやすくなります。
- 何を改善するために使用するのか
- 栽培する作物と品種
- 育苗中、定植直後、収穫中などの生育段階
- 使用する季節と期間
- 露地栽培かハウス栽培か
- ハウスの外張りか内張りか
- 張りっぱなしか、一時使用・開閉式か
- 希望する遮光率
- 色と遮熱性能
- 必要な幅と長さ
- ハトメや固定方法
現在使用している遮光ネットがある場合は、商品ラベル、メーカー名、品番、遮光率、色、ネットの写真を確認すると、同等品を探しやすくなります。
遮光ネットの選び方に関するよくある質問
遮光率50%なら、温度も半分になりますか?
いいえ。遮光率は光を遮る割合であり、温度の低下率を表す数値ではありません。
温度への影響は、ネットの色、素材、遮熱性、通気性、設置位置、換気条件などによって変わります。
同じ遮光率なら、どの商品を選んでも同じですか?
同じではありません。
メーカーや製品によって、素材、編み方、色、散乱光、反射率、遮熱性能、通気性などが異なります。
黒、白、シルバーのどれがおすすめですか?
単純な日よけや選択肢の多さを重視する場合は黒色、光を反射・散乱させながら使用したい場合は白色、日射や熱線の反射を重視する場合はシルバー系が候補になります。
ただし、色だけでは性能を判断できません。商品ごとの遮光率、素材、遮熱性能、通気性を確認してください。
作物ごとのおすすめ遮光率はありますか?
作物名だけでは、適切な遮光率を一つに決められません。
同じ作物でも、地域、時期、品種、生育段階、設置方法、使用時間によって適切な遮光率が変わります。
まずは使用目的と使用条件を確認し、そのうえで遮光率の候補を絞りましょう。
まとめ|遮光ネットは遮光率だけで選ばない
遮光ネットを選ぶときは、遮光率の数字だけを見るのではなく、次の順番で確認しましょう。
使用目的
↓
設置場所
↓
作物と生育段階
↓
使用時期・使用期間
↓
遮光率・色・遮熱性
↓
サイズと固定方法
遮光率が高いほど、必ず涼しくなるわけではありません。
また、同じ遮光率でも、メーカー、素材、色、編み方、設置方法によって、実際の光環境や温度への影響が異なる場合があります。
この記事で紹介した「弱め・中程度・強め・非常に強い」という区分は、商品を比較しやすくするためのアグリズ独自の目安です。
作物、使用目的、使用時期、設置環境を確認し、条件に合った遮光ネットを選びましょう。










